校長先生からのメッセージ

選択のときに

■選択のときに
校長 渡邉 博司

夏から秋にかけてはアカデミックな行事がたくさんあります。
SAP(*1)・Exchange Program(*2)・ポーランドへのスタディトリップなど、オプショナルな行事に参加した生徒たち。
彼らは、KLASならではの特別な体験を経て、ものの見方や人間の幅を広げたことでしょう。

この他にも、これから生じるプログラム選択や科目選択では、生徒たちは自分の将来の設計を立てて、それを実現するために必要な選択を重ねなくてはならず、そのためのガイダンスと担任との話し合いがこれから進んでいきます。

中学校までは、同級生たちとほぼ同じ道を進んできた彼らは、高校を選択するとき、本格的に自分の道を考えさせられました。スイスにあって、英語を多用するユニークな高校を選んだ本校の生徒たちは、 他とは違う自分を強烈に意識することになったはずです。

その高校に入ってからさらにその先を考えることは、より一層、他と自分の違いを意識させるはずです。
これから進む大学は専門教育で、しかも、海外大学への進学も視野にあり、幅広い選択肢になります。
したがって、その準備は千差万別で、誰かと全く同じ選択結果になることは稀であり、まさに自分のための道となります。

学校のパンフレットやポスターに、Gateway to the World というフレーズがあります。
これは、「日本の各地から有意な生徒がスイスの山の上に集まり、ここで共に学んだ後に、どこでも通用する有能な若者として世界各地へ散っていく」、そんなイメージをもとにしています。
あるいは、「意欲に満ち、よく準備された日本の若者を世界に送り出す」、そんな役割を担いたいという学校の使命を表しています。

さまざまな目標を持つ生徒が交錯する場にあって、プログラム選択と科目選択は自分の将来にかかわる大切なものです。
本人、ご両親、担任とで慎重に進めてまいりましょう。

そうは云っても、何かを選ぶことは簡単で単純なことではなく、迷いもあれば、問題を孕んでいることもあります。

たとえば、「〜になりたい」とはっきりしている場合は、何をすべきかの答えはすぐに見つかるので問題はないように見えますが、「周囲の大人の期待」に応えようとしているだけで、必ずしも自分の希望でなかったり、遠すぎる目標であったりと、実際には問題を先送りにしているにすぎないこともあります。

一方、「なりたい自分」がわからないで、悩むケースもあります。それでも、迫り来る選択には答えを出さなくてはならないので大変です。

技術や知識のレベルが高度になった現代社会では専門化が進み、教育も細分化されているので、「選択」も必要なことです。
だからと云って、「答え」ばかりを性急に求めてもうまくいくはずもなく、焦らないで、時間をかけて落ち着いて決めていくこともまた大切なことだと云えます。

「自分探し」に有効なのは、必要な時間をかけることの他に、多くの人と交流を持ち、よく人と話すことです。
他人のことはよくわかっても、自分の実像は見えにくいものです。自分の姿は鏡で見るように、他人と話すことで本当の自分が見えるようになるのだと思います。
人と意気投合したり、反発したりする中で、自分の考えがはっきりとし、その繰り返しで自分が形作られていきます。
その意味で、同年齢の友人たちと共に暮らす生活環境は良い材料に満ちていると云えます。

それと同時に、家族の存在が大きな影響力を持つことは云うまでもありません。
ところが、親が子に何を語れるかは誠に難しい問題です。「選択」に追われるこの時期は、思春期でもあり、特にそうです。
親の期待は励ましでもあり、プレッシャーでもあります。良かれと思って云うことが、思わぬ反発を招くこともあります。

それでも、熱く語るか、頑固に求めるか、黙して背中で語るか、ありとあらゆるスタイルがあるはずですが、「こうすれば良い」という答えはありません。
悩みの深いところだと思いますが、子どもは意外と親をよく見ているものです。彼らが「本当の答え」にたどり着くまでの間、上手にコミュニケーションをとりたいものです。

(*1) SAP … サマー・アブロード・プログラムの略。アメリカやイギリスなどの英語圏の大学では、夏休み中の数週間に高校生・留学生向けのプログラムが実施される。参加する生徒たちは大学の寮などに宿泊しながら講義を受ける。

(*2) Exchange Program …スイス国外の提携校との間で実施する生徒同士の交換プログラム