寮父/寮母先生の日記

寮生活だより 〜若者の社会性を育む「ナナメの関係」〜

■寮生活だより 〜若者の社会性を育む「ナナメの関係」〜
寮父 松野 岳水

 スイス公文の教育力とはどこにあるのでしょうか。少人数のクラス編成でしょうか。日英両語による学校運営でしょうか。スイスの山の上という環境でしょうか。寮での共同生活でしょうか。もちろんその全てであると言えますが、私はここに、創立以来続く「生徒と社会との豊富な接点」という特徴を加えたいと思います。

 本校の生徒は、様々な機会を通じて地域社会と触れ合い、そこから何かを感じ取ります。また、エクスチェンジ・プログラム(*1)、音楽祭、文化祭やスポーツ大会その他のイベントを通じて、世界各国の同世代と交流し大きな刺激を受けます。そして、バラエティに富む大人とのコミュニケーションから、社会で求められる振る舞いを学んでいきます。

 まず、生徒と教職員という関係についてみると、一般的なそれは授業と教室を基本とする関係ですが、本校では教室内同様、教室外の関わりがとても多い。放課後も、時に夜や週末にも時間を共にしますので、全てと言わずとも多くをさらけ出して付き合うことになります。そこでは、私たちも四六時中模範的とはいかず、時に愚痴や本音も出たり、みっともない姿を見せたりもします。生徒たちは、大人もまた同じ人間であり、悩みや矛盾を抱えた存在ということを知るのです。

 しかし、高校生にとっては、教職員以外の存在のほうが、彼らのロールモデルとして強烈な印象を与えるでしょう。とりわけ卒業生、それも彼らの年に比較的近い「先輩」たちの姿は、憧れであり目標でもあります。

 そして、他の生徒の保護者の存在。これこそ本校の誇る「ナナメの関係」、頼れる関係性資本であります。例えば、ある生徒がある職業に関心を持っていたとしましょう。それを伝え聞いた別の生徒が親に何気なくその話をすれば、そこからまた別の保護者に伝わり、その道のプロのところに行き着き、気がつけば彼は休暇中にそこで職場体験をしている。この手の話は、本校では決して珍しくありません。

 日本では近年、親・親戚、学校教員以外の第三者と子どもとの「ナナメの関係」をつくろうと意図した動きがありますが、それは裏を返せば、日本の社会が若者に対する教育力を失って久しいことの証しでもあります。

 そんなことを知ってか知らずか、本校の生徒たちは、様々な機会をとらえてあらゆる国籍・世代とのコミュニケーションを楽しんでいます。トリップ先のガイドたち、スポーツや音楽のインストラクター、時には町のレストランや旅先のあらゆる場面で。清掃スタッフやキッチンスタッフとすっかり仲良しな生徒もいます。ここで彼らに生まれる様々な感情が後の成長の糧となることは想像に難くありません。決して学校パンフレットにうたわれるようなプログラムされた学びではなく、大学合格実績など表面的な指標でも測れませんが、私たちが、大切にしていることの一つといえます。

(*1) エクスチェンジ・プログラム …スイス国外の提携校との間で実施する生徒同士の交換プログラム